研究概要 |
本研究では、高周期14族元素カチオン性多中心錯体及び関連化合物の合成と構造、化学的特性の解明を目的とした。即ち、高周期14族元素のラジカル、カチオン、アニオン、イオンラジカル等の系統的合成法を確立し、構造、物理的・化学的性質等の基本的物性の評価を行い、機能性物質としての活用を検討した。 1.飽和ケイ素上に二つのジ-tert-ブチルメチルシリル基、不飽和ケイ素上にトリ-tert-ブチルシリル基を持つケイ素不飽和3員環化合物シクロトリシレンを酸化することにより、シクロプロペニリウムイオンのケイ素類縁体シクロトリシレニリウムイオンを得ることに成功した。溶液状態での各種分光学的データ、単結晶X線構造解析の結果、シクロトリシレニリウムイオンは溶媒や対アニオンとの相互作用のないフリーなケイ素カチオン種であり、骨格元素がケイ素のみから構成される2π電子系芳香族化合物であることを明らかにした。 2.ジ-tert-ブチルメチルシリル基を置換基とするテトラブロモシクロテトラシラン、1,2-ジクロロ-1,2-ジシラ3,4-ジゲルマシクロブテンの還元的脱ハロゲン化反応により、シクロブタジエンジアニオン高周期元素類縁体を合成した。X線構造解析の結果、骨格は大きく折れ曲がった4員環を持ち、6π電子系でありながら非芳香族化学種であることを明らかにした。 3.シリルナトリウム種の反応性を利用してπ共役安定化のないシリル置換ケイ素、ゲルマニウム及びスズラジカル種をグラムオーダースケールで安定に合成することに成功した。いずれのラジカル種も結晶中において分子間の相互作用がないフリーラジカルとして存在し、スピンが一炊元に配列した新規なナノ構造であることを明らかにした。また、一連のケイ素、ゲルマニウム、スズラジカルも容易に一電子酸化、一電子還元反応を受けることも明らかにし、ELやスピンエレクトロニクスなどの機能性物質への応用が期待できることを明らかにした。
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