研究概要 |
本研究課題で今年度得られた成果を以下に示す。 1.ジメチルシリルエノラートおよびその等価体を用いるジオールおよびアミノアルコール類の合成 フッ化物イオン触媒を用いてジメチルシリルエノラートとアルデヒドを反応させると、1,3-ジオール類が生成することを既に速報として報告した。しかし、収率、立体選択性が低い場合もあり、さらに反応条件を改善することで、より一般性の高い合成反応とする。α-ジメチルシリルエステルを用いた場合にも、アルドール反応後にエステルの還元が進行して、低収率ながら1,3-ジオールが生成することから、このタンデム反応の最適化も行った。また、アルデヒドのかわりにイミンを用いることでγ-アミノアルコール類の合成について検討した。 2.ジメチルシリルエノラート、α-ジメチルシリルエステルの求核付加反応 ジメチルシリルエノラートのトシルイミンに対するMannich型反応について、0.6当量の水と触媒量の塩基によって反応が著しく加速されることがわかっている。この触媒系の特長、適用範囲を明らかにした後、水を過剰に含む有機溶媒あるいは水中でのMannich反応を試みた。また、Mannich型反応についても金属塩の添加効果を調べ、環境調和型合成法として、より有用な反応系を模索した。さらに、光学活性なアミンを触媒として用いることで、β-アミノケトン類の不斉合成を目指した。 ジメチルシリルエノラートのアルドール反応が、塩化カルシウムのような無害で安価な金属塩触媒により効率良く進行することを既に見つけている。この触媒系の特長、適用範囲を明らかにするべく、(1)基質としてα,β-不飽和カルボニル化合物を用いてMichael付加反応を試みた。(2)様々なアルデヒド、ケトンとのアルドール反応を行った。(3)α-ジメチルシリルエステルを用いるアルドール反応およびMichael付加反応について検討した。また、含水溶媒あるいは水中でのアルドール反応について検討し、有機溶媒の使用を最低限に抑えた新反応系の開発を目指した。さらに、他のアルカリ土類およびアルカリ金属塩などの添加効果について詳細に調べ、立体選択的合成に有効な触媒を探索するとともに、本触媒系における金属塩の役割を明らかにした。
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