研究概要 |
Keggin型ポリオキソメタレート[XW_<12>O_<40>]^<n-> (X=P,Si,B,Co, n=3,4,5,6:以下XWと略記)と三核Cr(III)-μ_3-オキソ錯体カチオン[Cr_3O(OOCH)_6(H_2O)_3]^+(以下Crあるいは"マクロカチオン"と表記)をアルカリ金属イオン(=M)共存下弱酸性水溶液中において混合すると、親水性微空間を有する結晶性固体M_<n-1>[Cr_3O(OOCH)_6(H_2O)_3]・[XW_<12>O_<40>] (=Cr-XW)が単一生成物として得られた。ここでアニオン電荷が低いポリオキソメタレートXWの固体ほど、カチオンとの間に働く相互作用が小さいために含有する微空間サイズは大きい。さらにこの結晶性固体より結晶水を除去して得られるゲストフリー相は、アルコールやニトリルなどの極性有機分子に対してイオン-双極子相互作用に基づく可逆的な識別収着(取り込み)能を示した。例えばCr-Siwはメタノール及びエタノールを固体中に収着する(取り込む)ことが出来るが、メタノールに対してより高い親和性を示すためにアルコール混合物中よりメタノールのみを選択的に収着する。また、このCr-Siw(-4価)は炭素鎖長2(=C2)までの有機極性分子を収着したが、よりアニオン電荷の低いCr-PW(-3価)はC4化合物までを収着し、逆にアニオン電荷の高いポリオキソメタレートを用いた場合には、Cr-BW(-5価)はC1化合物(CH_3OH)のみ収着可能であり、Cr-CoW(-6価)ではもはや有機分子を収着できない。以上のようにクロムカチオン錯体との複合化により得られる結晶性固体においては、用いるポリオキソメタレートのアニオン電荷に応じ、その有機分子に対する識別収着(取り込み)能を炭素数一個の精度で制御可能であることが明らかとなった。
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