ハイブリッド超臨界流体中における実践的触媒反応の開拓

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14078209
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 碇屋 隆雄 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30107552)
• 研究分担者: 伊藤 正人 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助手 (20293037)
• キーワード: 超臨界流体化学 / 動的機能・分子触媒 / 環境技術 / 合成化学 / 触媒・化学プロセス / 不斉触媒反応

研究概要

1 高温、高圧下で観測可能な超臨界流体NMRを用いて、アミン類と二酸化炭素とから生成するカルバミン酸の動的挙動に関する知見を基に、Ru触媒存在下に、超臨界二酸化炭素とフェニルアセチレンとジエチルアミンから、対応するZ体のカルバミン酸ビニルエステルが収率よく得られることを見いだした。超臨界二酸化炭素中において、高濃度にカルバミン酸が生成するため、反応の高効率化が実現されたと考えられる。
2 超臨界二酸化炭素の水素化を経由する、DMF合成反応における触媒回収・再使用をめざし検討した結果、水や有機溶媒双方に親和性を有する両親媒性高分子にRu錯体を担持した触媒が、超臨界二酸化炭素-水二相系反応において高い触媒活性を維持しつつ、回収・再使用可能であることを見いだした。
3 動的機能分化型触媒として有効な、光学活性ジアミン配位子を有する不斉Ru触媒が、α位にシアノ基、ニトロ基およびクロロ基を有するアセトフェノンの不斉還元に有効で、対応する光学活性アルコールが収率よく高い光学純度で得られることを見いだした。これらのアルコール類は定法により光学活性アミノアルコールや光学活性エポキシ化合物へと変換されることから、本不斉還元法が実用的に優れていることを示す結果であるといえる。
4 光学活性ジアミン-Ru錯体が、マロン酸ジエステル環状エノン類とのマイケル反応の触媒として有効であることを見いだした。この反応は基質/触媒比100の条件でも室温で円滑に進行し99%以上の光学純度をもつ生成物が定量的に得られる。触媒中間体として金属-炭素結合を有する新たなマロネート錯体が得られることから、これを鍵として炭素-炭素結合形成が進行しているものと考えられる。この結果は動的機能分化型触媒反応の新たな展開として興味深い。

研究成果

• [文献書誌] K.Murata, H.Konishi, M.Ito, T.Ikariya: "Deprotonation of Organic Compounds Bearing Acid Protons Promoted by Metal Amido Complexes with Chiral Diamine Ligands Leading to New Organometallic Compounds"Organometallics. 21. 253-255 (2002)
• [文献書誌] M.Watanabe, K.Murata, T.Ikariya: "Practical Synthesis of Optically Active Amino Alcohols via Asymmetric Transfer Hydrogenation of Functionalized Aromatic Ketones"J.Org.Chem.. 67. 1712-1715 (2002)
• [文献書誌] T.Oku, T.Ikariya: "Enhanced Product Selectivity in Continuous N-Methylation of Aminoalcohols over Solid Acid Catalysts with Supercritical Methanol"Angew Chem.Int.Ed.Engl.. 41. 3476-3479 (2002)
• [文献書誌] T.Hamada, T.Torii, K.Izawa, R.Noyori, T.Ikariya: "Practical Synthesis of Optically Active Styrene Oxides via Reductive Transformation of 2-Chloroacetophenones with Chiral Rhodium Catalysis"Org.Lett.. 4. 4373-4376 (2002)
• [文献書誌] H.Zhang, C.-B.Yang, Y.-Y.Li, Z.R.Dong, J.-X.Gao, H.Nakamura, K.Murata, T.Ikariya: "Highly Efficient Chiral Metal Cluster Systems Derived from Ru_3(CO)_<12> and Chiral Diiminodiphosphines for the Asymmetric Transfer Hydrogenation of Ketones"Chem.Commun.. 142-143 (2003)
• [文献書誌] Y.Kayaki, Y.Shimokawatoko, T.Ikariya: "Amphiphilic Resin-Supported Ruthenium(II) Complexes as Recyclable Catalysts for the Hydrogenation of Supercritical Carbon Dioxide"Adv.Synth.Catal.. 345. 175-179 (2003)