遷移金属クラスター反応場の電子状態制御

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14078210
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 鈴木 寛治 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30106629)
• キーワード: 金属クラスター / ポリヒドリド / ルテニウム / 電子密度制御 / 四核クラスター / 五核クラスター / 架橋配位子 / 多金属中心

研究概要

クラスターを構成する金属核の数が増加すれば金属クラスターの「電子プール」としての機能は向上すると考えられる。すなわち金属核数が増すことによってクラスターのHOMOレベルは上昇し、その結果金属中心と反応基質分子との間での電子移動がより円滑になるものと考えられる。さらに、基質-クラスター間を移動する電子の数も増加し、基質の多段階酸化還元反応が可能になるものと期待される。本年度はCp基(C_5H_5)およびCp'基(C_5Me_5)を支持配位子として持つ多核クラスターの合成に取り組み、Cp基とCp'基のさまざまな組み合わせをもつ四核および五核のルテニウムポリヒドリドクラスターの系統的かつ合理的な合成法を開発した。引き続き、多核化によるクラスターの電子状態の変化を酸化還元電位から評価した結果、四核クラスター同士の比較では、Cp環上のメチル基の数が増すほど酸化還元電位は低電位側にシフトしており、この結果は補助配位子の組み合わせをさまざまに変化させることで四核クラスター反応場の電子状態の制御が可能であることを示している。また、構造が異なるため単純に比較することはできないが、五核クラスターの方が低電位側にピークを持つ。この結果はクラスターを多核化することによって基質との間の電子移動がより容易になり、反応性が向上することを示唆している。

研究成果

• [文献書誌] 大木靖弘, 上原直樹, 鈴木寛治: "Rational Synthesis of Novel Tetranuclear Ruthenium Polyhydride Clusters and their Mixed-Ligand Analogues"Angew.Chem.Int.Ed.. 41. 4085-4087 (2002)
• [文献書誌] 大木靖弘, 上原直樹, 鈴木寛治: "Pentanuclear Polyhydride Cluster of Ruthenium with Trigonal Bipyramidal Geometry Synthesis and Fluxional Behavior"Organometallics. 22. 59-64 (2003)
• [文献書誌] 鈴木寛治: "Activation of Organic Substrates on Multi-Metallic Sites of Transition Metal Polyhydride Clusters Having C_5Me_5 Groups as Auxiliary Ligands"Eur.J.Inorg.Chem.. 1009-1023 (2002)
• [文献書誌] 大木靖弘, 鈴木寛治: "Migration of a Phosphine Ligand between the Two Metal Centers in Diruthenium Hydrido Complexes"Angew.Chem.Int.Ed.. 41. 2994-2997 (2002)
• [文献書誌] 高尾俊郎, 竹森利郁, 守谷誠, 鈴木寛治: "Skeletal Rearrangement of a C_2 Unit on a Triruthenium Cluster. Synthesis of μ-Ethylidene, μ_3-Ethylidyne, and μ_3-Vinylidene Complexes by the Reaction of {Cp^*Ru(μ-H)}_3(μ_3-H)_2 with Acetylene"Organometallics. 21. 5190-5203 (2002)
• [文献書誌] 大橋理人, 松原公紀, 鈴木寛治: "Novel Trinuclear Ruthenium Polyhydride Complexes with a Triply Bridging Ligand Containing Group 1,2,12, and 13 Metals, (Cp'Ru)_3(μ_3-M)(μ-H)_3(μ_3-H)(Cp' =η^5-C_5Me_5 ; M=Li, Mg^iPr, and ZnEt) and (Cp'Ru)_3(μ_3-M)(μ-H)_3 (M=AlEt and GaMe)"Angew.Chem.Int.Ed.. 42. 819-823 (2003)