塩化鉄(III)水溶液にアルカリを加えていくと、オール化やオキソ化を伴って鉄(III)コロイドが得られる。これをナノサイズ反応場として、L-フェニルアラニン(Phe)の重縮合の検討を行った。また、対イオンと鉄コロイドの濃度依存性を検討するため、硝酸鉄(III)水溶液から得られる鉄コロイドを用いてPheの重縮合を行った。さらに、Pheの鉄コロイドに対する吸着量と得られる縮合体との収率との関係を検討した。得られた白色沈殿は1H-NMRおよびFT-IRによりフェニルアラニン縮合体であることを確認した。得られた縮合体の数平均分子量を末端基定量法で評価したところ、重合度は10(M_n=1500)まで伸長していることが判った。pHを変化させて得られた白色沈殿の収率はpHに大きく依存した。pH6.3において最大の収率(15%)が得られた。この値は鉄コロイドが存在しない場合の2.5倍であった。また、Pheの鉄コロイドに対する吸着量を調べた結果、得られる縮合体の収率はPheの吸着量に相関していることが見出された。 さらに、塩化金酸水溶液にL-システインの酸化体であるL-シスチンと水素化ホウ素ナトリウム混合水溶液を滴下して室温で1時間撹拌した後、縮合剤として水溶性カルボジイミド(EDAC)を加え、0℃で24時間撹拌した。金ナノ粒子がない場合に水中でL-システインの重縮合を行ったところ、縮合体は全く得られなかった。塩化金酸水溶液にL-シスチンと水素化ホウ素ナトリウム混合水溶液を滴下して室温で1時間撹拌した試料について透過型電子顕微鏡観察を行ったところ、粒径3〜5nmの金ナノ粒子が生成していることを確認した。
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