研究概要 |
われわれはRh(acac)(C_2H_4)_2と不斉配位子binapとから系中で発生させたロジウム錯体Rh(acac)(binap)が電子不足アルケン類へのアリールおよびアルケニルボロン酸の不斉1,4-付加反応の良好な触媒となることを見出した.反応は水を含む溶媒系中100℃で進行し,α,β-不飽和ケトンばかりでなくα,β-不飽和のエステル,ホスホン酸やニトロアルケンなど高範囲の基質に高収率で付加し,高い鏡像異性体過剰率の相当する1,4-付加生成物を与える. このロジウム触媒不斉1,4-付加の反応機構として,有機ボロン酸からトランスメタル化によって発生したアリール-ロジウム種が高エナンチオ選択的にオレフィンに付加し,生成したオキサーπ-アリルロジウム中間体が水によりプロトノリシスを受けて最終生成物を与え,同時にヒドロキソロジウム種を再生する触媒サイクルを明らかにした.またこの反応機構の研究の中から従来より高活性な触媒として[Rh(OH)(binap)]を発見した.35℃で触媒反応は進行し,また副反応である有機ボロン酸の加水分解が抑制され,高収率で目的とする1,4-付加生成物が得られた.エナンチオ選択性は極めて高く,いずれのエノンの不斉付加反応でも97%eeを超える鏡像異性体過剰の生成物を与えた.また有機ボロン酸に代わり有機チタン試薬ArTi(OPr-i)_3を用いると,エノンへの1,4-付加はTHF中,20℃で速やかに進行し,チタンエノラートが収率良く発生することを見出した.
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