研究概要 |
これまで不斉水素化に代表される不斉還元や不斉エポキシ化などの不斉酸化では比較的効率の高い触媒的な不斉反応プロセスが知られているが,炭素-炭素結合形成反応では一般性・汎用性ある高効率触媒的不斉化学プロセスの例は少ない.本研究では,新規不斉触媒反応として,不斉付加反応に着目し,不飽和結合への付加反応による新規不斉炭素-炭素結合形成反応の開発とその高効率化を目指した. これまで不斉炭素-炭素結合形成反応として,主としてロジウム錯体触媒を用いたα,β-不飽和ケトンへの不斉共役付加反応の研究を進めてきたが,平成16年度には様々な電子不足オレフィンへの付加反応やアルキンへの付加で始まる環化反応や異性化反応などへと展開した.環状のα,β-不飽和エステルへの有機ボロン酸の付加では99%eeを超えるエナンチオ選択性で(R)-Tolterodineの直截的な不斉合成に成功した.またアリール亜鉛試薬とクロロトリメチルシランの組み合わせにより,反応性の低い窒素置換基を含む環状エノンへの付加反応を実現し,生理活性化合物として重要なジヒドロキノロン類の触媒的不斉合成も可能になった.さらにホスフィニルアレンへのアリールボロン酸の不斉付加が高収率,高選択的に進行し光学活性なアリルリン化合物が得られることを見出した.アリールアルキニルケトンのインダノン類への不斉異性化では,新しく設計した軸不斉ジアリールビスホスフィンbismopを用いることにより,高い立体選択性が実現できた.またα,β-不飽和ケトンへのフェニルボロン酸のロジウム触媒不斉付加の反応速度を精密に測定することにより,ロジウム触媒の大部分が2量体として存在することや触媒サイクルに含まれるトランスメタル化の速度を得ることができた.
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