研究概要 |
新規配位子系である7員環を2つ縮環した3座配位子系のうち,硫黄を配位原子とする系では,中心にホウ素原子及び炭素原子を導入することができた。中心の炭素をカチオンとした場合の構造を,エックス線解析およびNMR, UVで検討したところ,中心炭素原子の置換基であるアリール基のパラ位の置換基が電子吸引性の場合は,片方の硫黄原子のみが配位した4配位構造,パラ位の置換基が電子供与性の場合は,両方の硫黄原子が配位した5配位構造をとることが分かった。硫黄原子を配位原子とする系では初の5配位超原子価炭素化合物の単離例となった。また,5配位構造をとる場合でも13C NMRの化学シフトが変化する例も観察された。この現象は,今まで当研究室で行ってきたアントラセンの酸素配位原子系では全く見られなかった現象であり,本配位子系での中心炭素と配位原子の硫黄との間には,かなりの相互作用があることが示唆された。現在,さらにDFT計算による詳細な結合状態の解析を行っている。
|