研究概要 |
6配位炭素化合物としては,これまでにCH_4のσ結合にプロトン化あるいは空軌道が配位した3中心2電子結合系,すなわち価電子が8個であるC(Ph_3PAu)_6^<2+>やCH_6^<2+>といった例,は報告されてきたが,超原子価化合物としての6配位炭素化合物については安定化を試みた例すら報告されていなかったので、本研究で合成を試みた.1,8-ジメトキシチオキサントンを市販の3-メトキシベンゼンチオールと3-ヨードアニソールから3段階で合成した(全収率40%).還元し酸処理することで過塩素酸塩を得,また1,8-ジメトキシチオキサントンとMeMgBrを反応させ酸処理することでオレフィンを合成し,続いて臭素化した.臭素化体をGrignard試剤に誘導し,上記過塩素酸塩と反応させDDQで酸化することで目的の前駆体アレンを得た.このアレンは^<13>C NMR(δ=94.2,216.1)や,IR(1909cm^<-1>)においてアレン骨格に特有の値を示し,X線解析によって構造を確定できたの構造解析の結果,アレン骨格を形成している3つの炭素原子(C12-C16-C26)の角度は167.2(5)°とかなり歪んでいることが明らかになった.これは,中心の炭素原子と周りの4つの酸素原子との反発のためであると考えられる.2,6-ジ-tert-ブチルピリジン存在下で過剰量のMe_3O^+BF_4^-を用いてアレンのジメチル化を試みたところ,生成物は期待した6配位構造ではなく4配位構造であることが^1H NMRスペクトルから示唆された.また、ビニル位炭素上のS_N2反応における遷移状態モデル化合物の合成も試みた。
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