研究概要 |
(1)sp^2混成リン配位子であるジホスフィニデンシクロブテン(DPCB)を用いてアリルアルコールのC-O結合切断に対してきわめて活性の高いパラジウム錯体を調製できることを見いだした。すなわち、RCH=CHCH_2OH(R=H, Me, Ph)から対応するπ-アリルを室温で瞬時に合成できた。白金錯体を用いたモデル実験の結果から、C-O結合の切断はカチオン性ヒドリド錯体によって引き起こされており、従来のパラジウム錯体の化学とは明らかに異なる機構が関与しているものと推定された。以上の知見を基に、アリルアルコールを反応基質とするN-アリル化およびC-アリル化触媒反応を開発した。いずれも90%以上の高収率で進行した。 (2)イオウあるいはセレンで置換されたカルベン配位子をもつFischer型カルベンルテニウム錯体の簡便な合成法を見いだした。すなわち、Ru(p-cymcne)(cod)、PCy_3、およびCl_2CHEAr(E=S,Se)をトルエン中、60℃で反応させることによりRuCl_2{=C(H)ER}(PCy_3)_2を47-80%の収率で合成単離できた。得られた錯体はノルボルネン誘導体と種々のビニルカルコゲニドとの開環クロスメタセシス反応に対して良好な触媒活性を示した。 (3)(2)で見いだした開環クロスメタセシス反応を利用して、ビニルモノマーの原子移動ラジカル重合のマクロ開始剤として有効な末端官能基化ポリノルボルネンを効率的に合成できることを示した。オレフィンメタセシス反応の触媒効率は高く、ノルボルネン基質に対して1万分の1モル以下の触媒量でもほぼ定量的にポリマーを合成できた。 (4)白金触媒によるアルキンのシリルボリル化触媒反応のすべての素反応過程の段階的検証に成功した。
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