(1)ゲルミル(スタニル)およびビス(スタニル)白金(II)錯体を合成し、それらの構造とアルキン挿入反応について詳しく検討した。ゲルミル(スタニル)白金錯体とフェニルアセチレンとの反応では白金-ゲルマニウム結合と白金-スズ結合への挿入錯体が2:8の比で競争的に生成し、その後、白金-スズ結合への挿入錯体は熱力学的により安定な白金-ゲルマニウム結合への挿入錯体へと異性化した。この結果と、先に報告したシリル(スタニル)白金(II)錯体に関する検討権結果を基に、アルキン挿入反応に及ぼす14族元素の効果について統一的な考察が可能となった。 (2)ジホスフィニデンシクロブテン配位子(DPCB)を有するパラジウム錯体を合成し、それらの触媒機能について検討した。DPCB-ヒドリドパラジウム錯体は種々のアリルエーテル類のC-O結合の切断反応に対して高い触媒活性を示し、この性質を利用して、アリル基で保護された種々のアルコール類の触媒的脱保護反応を開発した。 (3)DPCB配位ルテニウム錯体が、末端アルキンのZ選択的ヒドロシリル化触媒として従来になく高い活性と立体選択性を示すことを見いだした。例えば、フェニルアセチレンのヒドロシリル化反応は、0.25mol%の触媒の存在下、塩化メチレン中、およそ10分で完結し、生成物のZ選択性は99%以上に達する。同様に、ジエチニルベンゼンやジエチニルフルオレンの二重ヒドロシリル化反応を、97%以上の立体選択性で行うことができた。合成されたアルケニルシランは、発光材料であるポリ(アリーレンビニレン)の合成原料として有用である。 (4)ビニリデンルテニウム錯体を触媒とする、アリールアセチレンとトリメチルシリルアセチレンとの共二量化反応を開発した。生成物は(Z)-1-アリル-4-トリメチリルシリル-1-ブテンイン構造をもち、シリル基を脱保護することによりシス構造をもつアルケニルアセチレンへと高収率で誘導化された。
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