研究概要 |
水中,不均一条件下での触媒的不斉合成手法の確立が新世代における理想化学反応システムに直結することは言を待たない.今回,幾つかのPS-PEG担持触媒を駆使し,水中での触媒的不斉アリル位置換反応,活性メチン炭素アルキル化,1,6-エンインの環化異性化反応を組み合わせることで,ラセミ体環状アリルエステルを出発として光学活性ヒドロインダン骨格を構築した. 環状アリルエステルは炭素求核剤,窒素求核剤,酸素求核剤と水中で円滑に反応し高い立体選択性を伴って対応する生成物を与えた.生成物(90%ee)の活性メチン炭素上へのプロパルギル基の導入はPS-PEG担持水酸化4級アンモニウムによって効率よく水中で進行し定量的収率で1,6-エンイン化合物を与えた. 1,6-エンインの環化異性化反応はカルボン酸存在下で低原子価パラジウム錯体によって触媒されることが知られている.我々は新たに開発したPS-PEG担持ジベンジリデン錯体がギ酸の存在下,水中,室温で効率よく1,6-エンインの環化異性化反応を触媒することを見いだした.この水中触媒工程を上述2工程で調製した1,6-エンイン化合物に適用することで目的とするヒドロインデンを光学活性体として得た. これら反応では生成物はその疎水性ゆえに濾過による反応後処理段階ではPS-PEGレジン内に保持されている.生成物を含んだレジンを超臨界二酸化炭素抽出することで高純度の生成物が得られ,触媒は回収されるすなわち本合成工程では,反応の実施,生成物の単離を通じて有機溶剤は全く使用しない.また反応に使用し回収された高分子触媒は再利用可能である.
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