研究概要 |
ピンサー錯体はベンゼン環1位に炭素-金属共有結合を有し、さらにベンゼン環2,6位に導入された中性(配位性)配位部位が1位金属にトランスキレート型で配位した、金属を橋頭位元素とする含金属双環性(メタラバイサイクリック)錯体である。近年その特徴ある物性から新材料および金属触媒としての利用が活発に研究されつつあるが、一般性・汎用性に富む錯体合成手法に関しては多くの検討余地がのこされていた。当該研究課題において我々は、あらかじめベンゼン環上に炭素-金属結合を形成し、そのアリール金属のベンゼン環2、6位に後工程で配位子基を構築する手法を開発し、これにより従来法では合成が困難であった多くのNCN型(窒素-炭素-窒素の3配位型)イミノピンサーパラジウム錯体を合成した。この新方法論による錯体形成の反応経路を解明することで効率性の高い不可逆なピンサー錯体調製条件に到達している。またピンサー錯体への各種外部配位子との配位平衡がNMRによって定量化できることを利用し、世界でも類例のない広範囲の配位子(リン配位子、アルシン配位子、窒素配位子などを含む)の配位能力の定量化・数標化に取り組み大きな成果をあげている。他に、爆発性ニトロメタンを水中において安全なC1試剤として利用したアリル位ニトロメチル化、同反応の不斉触媒化、同不斉工程の立体選択性発現機構解明、両親媒性PS-PEG分散包埋白金ナノ粒子触媒開発と同触媒によるアルコール類の空気酸化応、ナノパラジウム触媒によるケトンのアルキルアルコールをアルキル化剤とするα位アルキル化、などに成果をあげつつある。
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