研究課題
本研究の目的は、ブラックホール(BH)へ落ち込むガスの流れと、BHの強い重力が引き起こす一般相対論的効果を、X線輝線スペクトルの精密分光観測により明らかにするために、X線観測と検出器開発の両面からBHの攻略を進めることにある。2005年に打ち上げられるAstro-E2のXRS検出器(マイクロカロリメータ:エネルギー分解能約6eV)については、軌道上でのキャリブレーションを可能にするために、フィルターホイールに弱い放射線源をつけるという改良を行い、フライトモデルの製作が進みつつある。また固体ネオンのデュワーに機械式冷凍機等を取り付けることにより、軌道上での寿命を2.5-3年にのばす計画である。一方、2010年ごろの打ち上げを目指すNeXT衛星のためにTESカロリメータの開発を進めており、セイコーインスツルメンツとの共同開発により、まず単素子でエネルギー分解能約6eVを達成し、より詳しい測定に基づいてエネルギーに対する線形性や詳細な特性を把握することができた。この分解能では、Mn-Kα1およびKα2の2つの輝線を明確に分離することができている。また、系外銀河に分布するBH天体や、活動銀河からのジェットなどの観測を目指して、TESカロリメータをマルチピクセル型にする開発も進めている。ここでは、複数の素子を異なる周波数でバイアスし、足しあわされた信号からそれぞれのピクセルの信号を分離することに成功したほか、マッシュルーム構造をもつビスマスX線吸収体を並べたものについて、10eV近くのエネルギー分解能を得ることができている。こうした結果は、国内の学会や国際学会等で報告されている。
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