研究課題
ハードウエアー開発においては、GLASTの最も重要な構成要素であるシリコンストリップ(SSD)の開発・製造・性能検査および供給が完全に終了した。リーク電流は2.5nA/cm2とほぼそろって低い値を示し、全空乏化電圧も50-100Vと運用上問題ない範囲が得られている。そして、初期不良のストリップの割合は約400万本に対して僅か0.008%という非常に優れた結果を出しており、我々の設計が非常に優れていることが証明された。こうして製造されたSSDを用いてフライトタワーの製造が開始され、現在までに2タワーが出来上がって性能試験が進んでいる。我々はSSDおよび読み出しアンプのTOT分布やdead channelの頻度分布を調べることを担当しており、SLACにおいて試験に参加している。良い感度を引き出すために必要なものとして、検出器レスポンスの理解がある。特にGLASTのようなサーベイ観測では、時々刻々と天体に関するレスポンスが変化していき、しかも検出器レスポンス自体が複雑であるので、検出器シミュレーターを使うことが必須である。我々は2000年から、Geant4を使って開発を進めてきており、最初は気球実験のジオメトリ構造を再現して、気球実験のデータ解析に用いている。また、一同じような手法は前ガンマ線観測衛星EGRETについても適用できるが、我々はGeant4によりEGRETの検出器シミュレーターを構築してデータ解析を行ってみて、検出器シミュレータによるGLASTデータの解析の感触や問題点を予め知る試みを進めている。本年度は、EGRET simulator部の確立、digitization/reconstruction部の構築を行い、EGRETのデータ解析を行う手前まで進んだ。来年度は、いよいよデータ解析を行うことができる。一方、衛星打ち上げ後の観測に備え、ブラックホール天体などのガンマ線と可視光の同時モニター観測、あるいは可視光による対応天体同定のために、広島大学に設置が進んでいる1.5m望遠鏡の整備を進めている。本年度は、特に観測環境モニターのためのシーイング測定装置の開発を行った。また、X線や可視光によるブラックホールの観測を打ち上げ前に進めておくことにより、観測開始後に効率良いガンマ線観測の方針を探っている。本年度は、ジェット放出を伴うブラックホールの降着円盤の状態をX線スペクトルから探ること、および、ジェットを伴う部天体について可視光の偏光観測を行うことによって、ジェットに伴うシンクロトロン放射の検出の試みを行った。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (4件)
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