研究課題/領域番号 |
14081202
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中内 啓光 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40175485)
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研究分担者 |
岩間 厚志 千葉大学, 大学院・医学系研究院, 教授 (70244126)
依馬 秀夫 東京大学, 医科学研究所, 産学官連携研究員(特任助教授) (50344445)
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キーワード | 造血幹細胞 / Endomucin / STAT5 / TMTSP / myeloproliferative disorder |
研究概要 |
1)造血幹細胞の多様性と階層性を明らかにする 造血幹細胞に特異的に発現している遺伝子群の解析から、新たな造血幹細胞のマーカーとしてTMTSPおよびEndomucinの2つを同定し、これらに対するモノクローナル抗体を作成した。主としてその発現について解析したところ、どちらも造血幹細胞、造血前駆細胞ならびに血管内皮細胞に特異的に発現していた。加えて胎齢10.5日のAGM領域にあるCD45-CD41+Endomucin+分画細胞に未分化な造血幹細胞を同定することができた。TMTSPに関してはVenousノックインマウスを作製し、その発現について詳細な解析を行った。その結果、TMTSPもほぼEndomucinと同様な発現パターンを示し、造血幹細胞のマーカーとして有用であることが示された。TMTSPの機能についてはホモマウス(Tmtsp欠損マウス)の解析が進行中である。 2)造血幹細胞の多分化能および自己複製能を規定する分子を同定する これまでにTPOによって誘導されるシグナルが造血幹細胞の自己複製に関与することを示してきた。TPOのレセプターであるc-mplによって活性化されるSTAT5に着目し、恒常的活性化型STAT5変異体(caSTAT5)をマウス造血幹細胞に遺伝子導入しその機能を解析した。caSTAT5発現細胞は体外培養後、多能性前駆細胞の著増や移植後の末梢血キメリズムの優位な上昇を示し、STAT5の選択的活性化が造血幹細胞の自己複製能を維持・促進すると考えられた。また、長期間観察した場合、caSTAT5発現造血幹細胞を移植したマウス全例で致死性のmyeloproliferative disorder (MPD)が発症した。しかし多能性前駆細胞にcaSTAT5を導入した場合、発現細胞は多能性前駆細胞の増加と有意な増殖活性の亢進を示したものの、移植しても骨髄再建に全く寄与せず、MPD病態も誘導し得なかった。これらのデータはSTAT5の恒常的活性化が造血前駆細胞に自己複製能を賦与するものではなく、造血幹細胞の自己複製能を増強する役割を持つこと、またMPDの発症には造血幹細胞の自己複製能が必要条件の一つとなっていることを示唆する結果が得られた。
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