研究課題/領域番号 |
14081204
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小川 峰太郎 熊本大学, 発生医学研究センター, 教授 (70194454)
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研究分担者 |
坂本 比呂志 熊本大学, 発生医学研究センター, 助手 (00347014)
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キーワード | 血液細胞 / 血管内皮細胞 / 中胚葉 / 心筋細胞 / 胚性幹細胞 / 多能性 / 転写因子 / 試験管内分化 |
研究概要 |
本研究は、複数の分化プログラムを構成するコンポーネントが混在している状態が多能性を支配する本質であると捉え、以下の2つの項目に関してその機構を解明することを目的としている。 1.血液と血管系の起源となる中胚葉細胞の多能性が成立する機構 転写因子Gata-2の遺伝子座にGFP遺伝子を相同組換えにより挿入したES細胞を試験管内で分化させ、中胚葉細胞におけるgata-2遺伝子の発現とそれに伴う分化能力の変化を解析した。その結果、中胚葉の段階でgata-2遺伝子を発現していない細胞には、血管内皮細胞と心筋細胞への両分化能を持つ前駆細胞が含まれることが見出された。さらに、gata-2遺伝子の発現に伴って中胚葉細胞は胚型赤血球への分化能力を持つようになり、心筋細胞への分化能力を失うことが明らかにされた。以上の結果から、中胚葉におけるgata-2遺伝子の発現は心筋細胞の分化プログラムと排他的であり、胚型赤血球への分化プログラムと相関することが示唆された。 2.血液幹細胞の個体発生の過程でその多能性が成立する機構 血管内皮細胞から成体型血液細胞系列が発生する過程で転写因子c-Mybが持つ機能を解析するために、c-myb遺伝子を欠損するES細胞の分化過程において、血管内皮細胞特異的なVE-cadherin遺伝子プロモーターの制御下にc-Mybの発現をレスキューした。その結果、血管内皮細胞の段階でc-Mybが発現するだけでは血液前駆細胞の発生には不十分であることが明らかにされた。今後、ES細胞から血液前駆細胞に至る発生過程においてc-Mybが真に必要とされる分化段階を特定する一方で、血管内皮細胞の中で成体型血液細胞系列への分化を規定する分子の同定を引き続き進める必要がある。
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