研究概要 |
私たちはES細胞を発生・分化のモデルに用いて、DNAメチル化酵素Dnmt3bに着目して発生初期のクロマチン構造変化の実態に迫ることを研究目標にしている。未だにDNAメチル化の調節機構はわかっていないが、哺乳類では正常な発生に不可欠な3つのDNAメチル化酵素が同定されている。中でもDnmt3bは発生初期に限って発現が高く、この時期のde novoのDNAメチル化に特に重要なので、この遺伝子のES細胞の分化に伴う発現抑制の機構をクロマチンレベルで解明することが、DNAのメチル化を含めた発生・分化に伴ったゲノムのクロマチン構造変換の機構と機能を明らかにする糸口になることが期待される。これまでにこの遺伝子を含む170kbのBACクローンを単離して、全塩基配列を決定し、Dnmt3b遺伝子座のゲノム構造を明らかにした。その結果38kbの領域に24のエクソンからなるDnmt3b遺伝子のゲノム構造が明らかになった。さらにこの遺伝子のプロモーターおよびエンハンサー領域を解析してCpGアイランドに含まれるプロモーターは本来どの細胞でも活性があるが、プロモーター上流に体細胞特異的な転写抑制領域が存在し、さらにDNAのメチル化を含めたクロマチン修飾によってDnmt3b遺伝子の転写が体細胞で抑制されることが示唆された(Gene, in press)。すでにDnmt3b遺伝子座の広範囲のゲノム領域におけるDNAメチル化パターンとDNase I高感受性部位の解析により、ES細胞の分化に伴ってクロマチン構造が激変する現場を見い出して研究を進めている。
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