研究課題
神経幹細胞の自己複製および分化に関与しているサイトカインレセプターのgp130、そしてmitogenであるEGFのレセプターの下流で働くシグナル伝達分子であり、MAP kinase経路およびPI3-kinase経路の活性化に関与していることが知られているGab1の神経幹細胞の増殖・分化における役割を明らかにするために、これまで、Gab1欠失変異体マウスにおける神経幹細胞の動態を含めた中枢神経系発生の異常の解析を行ってきた。その結果、これまでに、1 Gab1はEGF依存性の神経幹細胞の増殖に必須であり、その欠失は、発生期にEGF依存性のグリア細胞の発生を低下させる。2.成体脳の神経新生部位である側脳室周辺部位では、gp130依存した神経幹細胞の維持に負に制御することなどを明らかにしてきた。そして今回新たに、gab1が、マウス胎仔脊髄腹側pMNドメインにおいて、bHLH型転写因子の1種であるOlig2を発現する幹細胞を含む神経系前駆細胞の、EGFシグナル選択的な増殖に必須であることを明らかにした。このOlig2陽性前駆細胞は、in vitroにおいては、EGFシグナルによって、増殖のみならず未分化性も維持され、神経系前駆細胞のもう1つのmitogenとして知られるFGF-2存在下での培養と比較しても、特にオリゴデンドロサイト前駆細胞への分化が抑制されていた。また、Olig2は、少なくとも胎仔終脳神経幹細胞においては、その自己複製を促進することが知られていることから、gab1は、胎仔期脊髄においてはOlig2の上流において神経幹細胞の自己複製に正に働いているものと思われる。さらに、このOlig2陽性前駆細胞に対するEGF刺激において、Gab1欠損によって影響を受けるシグナル伝達経路を調べたところ、MAP kinase経路には変化が見られず、PI3-kinase-Akt経路のみが反応性を失っていたことから、Olig2陽性前駆細胞のEGFシグナル依存的な自己複製には、Gab1を介したPI3K-Akt経路の活性化が必須であることが示唆された。
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