研究課題
神経幹細胞の自己複製および分化に関与しているgq130やEGFレセプター(EGFR)の下流で働くシグナル伝達分子であるGab1の神経幹細胞の増殖・分化における役割を明らかにするために、これまで、Gab1欠失変異体マウスにおける神経幹細胞の動態を含めた中枢神経系発生の異常の解析を行ってきた。その中で、これまでGab1が妊娠12日目(E12)のマウス胎仔脊髄腹側pMNドメインにおいて、Olig2を発現する幹細胞を含む神経系前駆細胞のEGFシグナルに選択的な増殖と、PI3-Kinase-Akt経路の活性化に必須であることを明らかにしてきた。そこで、E12のGab1欠失変異体マウス胎仔脊髄細胞に、レンチウイルスベクターを用いて活性型Aktをin vitroで発現させたところ、Gab1欠損によるEGF依存的なOlig2陽性前駆細胞の増殖低下がレスキューされた。したがって、EGF依存的なE12脊髄Olig2陽性前駆細胞の増殖にはGab1を介したPI3-Kinase-Akt経路の活性化が必須であると考えられた。一方、マウス脊髄の発生におけるEGFRの発現を詳細に解析したところ、E12でpMNドメインに限局して発現が開始し、その後E14ではPax7を発現している背側ventricular zone(VZ)の前駆細胞でも発現を開始し、これらの一部はOlig2も発現していた。そこで、E14のGab1欠失変異体マウスを解析したところ、背側VZにおいてPax7およびOlig2が共に発現している前駆細胞の数が野生型と比較して著しい低下が観察された。また、in vitroにおいてもそれらのEGF依存的な増殖が顕著に低下していた。そして、ここでもその表現型は活性型Aktの強制発現によってレスキューされた。興味深いことに、この時期においては、腹側のOlig2陽性細胞のEGF依存的な増殖にGab1の欠損は影響しなかった。このように、中枢神経系発生において前駆細胞は、領域や時期によって、mitogenに対する反応性のみならず、それを支える細胞内情報伝達システムまでも変化しながら増殖が制御されていることが明らかとなった。
すべて 2006 2005
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