本研究は平成14年〜18年度の特定領域研究「糖鎖によるタンパク質と分子複合体の機能調節」の計画研究として実施されたもので、種々の糖脂質糖鎖合成酵素のノックアウトの中で、特にGM3合成酵素のノックアウトマウスを樹立し、その分子生物学的、生化学的検討を行った。また、基本的な行動異常の観察を行った。 これらの成果を以下にまとめると、 1.樹立したGM3合成酵素遺伝子のノックアウトにつき、主にPCRにより相同組換えを確認すると共に、RT・PCRによりGM3合成酵素のmRNAの発現消失を確認した。 2.最初に樹立したラインに加え、他の相同組換えES細胞株より別のKOラインを樹立して、その相同組換えについても同様に確認作業を行った。 3.これらのKOマウスの脳および肝臓から糖脂質を抽出し、ガングリオ系糖脂質の構成成分の変化を確認した。GM3を起点とする酸性糖脂質が消失し、アシアロ系の糖脂質の著明な増加を認めた。 4.全身の主たる臓器における組織構築の変化を病理学的に検討したが、明らかな異常は認められなかった。 5.GM3合成酵素のノックアウト(KO)(homozygous)で見られた毛色の変化が、2ラインのKOで共通して観察され、ガングリオシドのメラノソーム形成への関与が確認された。 6.KOマウスと野性型マウスの脳より抽出したライセートを用いて電気泳動を行い、発現タンパク質の変化につき検討した。ラフト分画へのフロチリン分布などは正常であった。 7.2次元電気泳動により、脳細胞膜のタンパク質の変化を検討し、特にラフト画分のスポットの変異を解析したが、現在まで明確な異常は認められなかった。
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