研究概要 |
哺乳動物の主要硫酸化糖脂質として、スルファチドとセミノリピドが存在する。スルファチドは主としてミエリン膜に存在し、セミノリピドは精巣に特異的に発現している。スルファチドとセミノリピドは、それぞれ、ミエリン形成細胞(中枢神経ではオリゴデンドロサイト、末梢神経ではシュワン細胞)と精子形成過程の精母細胞において生合成される。前年までに、これら糖脂質の硫酸化を担う硫酸転移酵素(CST)のノックアウトマウスを作製し、スルファチドがミエリン-アクソン間ジャンクション形成に、セミノリピドが精子形成に必須な分子であることを証明した。今年度はさらに、CST欠損マウス由来のオリゴデンドロサイトの培養系とin vivoにおけるミエリンマーカー遺伝子の発現を指標に、CST欠損マウスではオリゴデンドロサイトの最終分化が促進していることを明らかにした(Glia 45:269,2004)。以前の研究で、スルファチドに対するIgM抗体が特異的にオリゴデンドロサイトの最終分化を抑制することから、スルファチドが何らかの内因性リガンドと結合することによりオリゴデンドロサイトの分化を負に制御していると思われる。また、腎臓に発現するスルファチドが単球上のL-セレクチンの内因性のリガンドであることを明らかにするとともに、片側尿管結紮による間質性腎炎の誘発実験において、スルファチドが単球の血管外への浸潤に重要な役割を果たすことを明らかにした(J.Biol.Chem.279:2085,2004)。この他、新規のN-アセチルグルコサミン転移酵素の遺伝子をクローニングし、これまでに知られていない基質特異性を発見した(J.Biol.Chem.278:43102,2003;ibid 279:2337,2004)。
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