研究概要 |
昨年度までに、糖脂質硫酸転移酵素(CST)のノックアウトマウスは、脳と精巣に存在する硫酸化糖脂質のスルファチドとセミノリピドを完全に欠き、ミエリン機能異常による神経症状を呈するとともに、精子形成が第一減数分裂中期において停止すること、さらに、CST欠損マウスの精子形成障害は生殖細胞側に原因があり、セミノリピドは分化型精原細胞以降の生殖細胞系譜で発現することを明らかにし、論文発表してきた。男性生殖細胞におけるCST遺伝子の発現メカニズムを明らかにするために、以前に明らかにしたマウスCST遺伝子の多重プロモーター(Eur. J. Biochem. 267,1909,2000)のうちの精巣特異的プロモーター部位の断片をリポーターのルシフェラーゼ遺伝子に繋いで、マウス生殖細胞にトランスフェクトして発現活性を持つ部位を調べた。その結果、上流-57〜-107bpの間に遺伝子発現促進活性が、-107〜-195bpと-375〜-582bpの間に遺伝子発現抑制活性がみられた。そこで、核抽出液を用いるゲルシフトアッセイにより、上流-57〜-107bpのDNA断片に生殖細胞特異的に結合する部位を見つけた。さらに、このDNA部位と結合する転写因子を、マウス精巣由来λファージcDNAライブラリーをサウスウエスタン法でスクリーニングすることにより見出した。現在、この転写因子が生殖細胞で発現しているか?どの時期に発現しているか?in vivoでのCST遺伝子発現に寄与しているかを検討中である。
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