研究概要 |
ヒトガン抑制遺伝子EXTファミリーメンバーの一つEXTL2はヘパラン硫酸(HS)の生合成に関わり、コアタンパク質との結合領域四糖に最初のα-GlcNAcを転移する酵素をコードする。そのマウスホモログの細胞外ドメインを可溶性タンパク質として大腸菌で発現させ、EXTファミリーで始めてX線結晶構造解析に成功し、触媒ドメインの3つのアミノ酸を同定し、酵素反応機構を解明した。 EXTファミリーメンバーEXT1とEXT2はともにHSの二糖繰り返し領域にGlcNAcおよびGlcAを転移し伸長反応できるが、単糖しか転移できず、これまで重合化反応は成功していなかった。今回、両酵素の遺伝子をCOS-1細胞で同時に発現させて精製し、結合領域四糖構造をもつトロンボモジュリンおよびグリピカンのコアタンパク質、あるいはGlcA-Gal-人工アグリコンを受容体基質として、分子量200kDa(1,000糖残基)を越える高分子重合ヘパランの合成に始めて成功した。 ヒトのコンドロイチン合成酵素のホモログを見い出し、cDNAをクローニングし、コンドロイチン合成酵素cDNAと共発現させ精製したものを酵素原、トロンボモジュリンやGlcA-Gal-人工アグリコンを受容体基質として、高分子コンドロイチンの重合化に成功した。このタンパク質をchondroitin polymerizing factorと名づけた。 線虫のゲノムデータベースにコンドロイチン合成酵素のオルソログを見出し、cDNAをクローニングし、GaINAcとGIcAの転移活性を確認し、二本鎖RNAを用いてRNAiを行ったところ、コンドロイチンの合成の阻害とともに細胞質分裂の阻害と細胞分裂の逆転現象を認めた。正常な培養線虫細胞をコンドロイチナーゼで処理して細胞表面のコンドロイチンを除去しても同様の現象を認め、コンドロイチンが細胞分裂に必須の分子であることを始めて示した。
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