研究課題
我々は種々の生体内生理活性因子サイトカインが糖鎖認識活性を有し、複合糖質が免疫系において生理活性モジュレーターとして機能していることを明らかにしつつある。昨年度、予備的な実験の結果からIL-6が高マンノース型糖鎖を持つ糖タンパク質に結合性を示したことから、平成17年度はIL-6の糖鎖結合特異性の決定及び生理活性発現に果たす役割について検討した。まず、プレート法による実験の結果、IL-6は高マンノース型糖鎖を持つリボヌクレアーゼB、オボアルブミンに対して高い結合性を示す一方、複合型糖鎖やGPIアンカーグリカン鎖を持つ糖蛋白質に対しては結合性が見出されなかった。さらに、ハプテン糖の添加、エンド酵素を用いた糖鎖除去により結合が阻害されたことから、IL-6が高マンノース型糖鎖に特異的に結合すると結論した。次にIL-6活性発現における糖結合活性の意義を明らかにするために、ヒト肝癌細胞株HepG2を用いて以下の実験を行った.HepG2細胞はIL-6刺激により、急性期タンパク質を産生することが知られていることから、Endo H酵素処理細胞と未処理細胞をIL-6で刺激して産生するフィブリノーゲン量をELISA法で測定した.その結果、Endo H酵素処理によって細胞表面の高マンノース型糖鎖が除去されると、IL-6刺激によるフィブリノーゲン産生量が減少することが判明した。さらにIL-6刺激によって生じる細胞内蛋白質チロシンリン酸化もEndo H酵素処理細胞では阻害されていることを見出した。さらにIL-6が認識する糖鎖を担う糖タンパク質の実体を明らかにするためにIL-6が細胞表面で結合するIL-6受容体とgp130が持つ糖鎖について調べたところ、IL-6受容体のみが高マンノース型糖鎖を持つことが判明した。したがって、IL-6はIL-6受容体の糖鎖とタンパク質をデュアルに認識している可能性が示唆された。
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