研究概要 |
サイトカインを中心とした糖鎖認識を介した機能性タンパク質の生理活性調節に関する研究を行った。サイトカインは造血系や免疫系の主要な情報交換分子で“重複性"であると同時に“多様性"である。本プロジェクトにおいて、この複雑な作用機作にサイトカインの糖鎖認識が関わっていることを明らかにした。既に報告のあったヘパリン/ヘパラン硫酸鎖を認識してシグナル伝達を引き起こす繊維芽細胞増殖因子ファミリーの他に、新たに高マンノース型糖鎖を認識するインターロイキン(IL)-2、5、6、8のグループとGPIアンカー糖鎖を認識するIL-1β, -18、TNF-αのグループが存在することを明らかにした。特に2量体のIL-2, IL-6はそれぞれの受容体サブユニットIL-2Rα, IL-6Rに結合しているMan_<5,6>GlcNAc_2の認識をトリガーとして高親和性複合体を形成し、シグナル伝達を誘導する。一方、IL-18とIL-18Rαは、CD48のGPIアンカー糖鎖の2つのマンノース6リン酸ジエステル残基をそれぞれ認識し、高親和性8量体を形成する。また、TNF-αは(TNF-α)_3(TNFR)_3(GPI)_3の高親和性9量体を形成してシグナル伝達を活性化する機構を明らかにした。本プロジェクトではサイトカインにとどまらず、いくつかの機能性タンパク質の糖鎖リガンドと新たな機能についても研究を行ってきた。中でもガレクチン-4とVIP36の新たなリガンド及び機能解析、間質性肺炎の繊維化の原因となる肺線維芽細胞への走化因子のエピトープについても成果を上げることが出来た。
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