研究課題
筋細胞膜の安定化に係わるα-ジストログリカンは、Oマンノース型糖鎖と呼ばれる特殊な糖鎖を有する。Oマンノース型糖鎖の合成に関わる糖転移酵素遺伝子POMGn71とPOMT1はそれぞれ先天性筋ジストロフィー症のmuscle-eye-brain病(MEB)とWalker-Warburg syndrome(WWS)の原因遺伝子であることから、Oマンノース型糖鎖の機能を解析することにより、先天性筋ジストロフィーの病態解明への重要な知見が得られることが期待される。本年度哺乳類におけるOマンノース転移酵素活性の測定法を世界で初めて確立した。次に、POMT1とPOMT2はOマンノース転移酵素であり、活性発現にPOMT1-POMT2複合体形成の必要性を示した。これまでWWS患者の遺伝子解析によりPOMT1遺伝子に7種類の変異がみいだされているが、それらの遺伝子変異産物について酵素活性を有するかどうか調べた。その結果、いずれの変異体も酵素活性を消失していたことから、WWSはPOMT1の機能喪失による疾患であることが明らかになった。また、MEBでみいだされたPOMGnT1遺伝子の13種類の変異のうち2種において、膜結合型から可溶型に変えることで酵素活性が回復されること、および353アミノ酸から構成される領域によってPOMGnT1の触媒活性は担われていることを明らかにした。一方、モデル動物であるショウジョウバエについても解析を進め、ショウジョウバエのPOMTホモローグにヒトと同様のOマンノース転移酵素活性があることを示した。また、RNAiによりショウジョウバエのPOMTの発現を抑制すると、筋形成に異常が生じることを見いだした。これらの結果は、脊椎動物と無脊椎動物を問わず筋形成においてOマンノース型糖鎖が重要であることを示している。
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