研究課題
本研究では、知識資源が文化的・社会的に構築されたものであるという観点から、アジア・アフリカの諸社会における知識の位置付けの仕方、社会編成と知識の社会内分布、知識資源の伝承過程、知的所有権はそれら諸社会においてどのように問題化されているのか、といった課題を統合的に再検討している。研究組織のメンバーは、知識を物心両面から捉え、具体的には伝統技術・技能、慣習、歴史、政治情報などの実践的知識と、儀礼、呪術、占術、神観念などに関する宗教的知識とに分類した上で、知識資源の事例を収集・分析することにより、アジア・アフリカ諸社会における知識・世界観の配列とその変化を明確にし、さらに知識が資源化ないし非資源化されるメカニズムを明らかにする。初年に当たる本年度において、研究を発足するため(1)研究会の開催、及び(2)現地調査の二本立てで研究活動を行なった。(1)については、知識が資源になれるかという基本概念を明確にするために、本年3月までに班内で研究会を合計6回開催した。そのうち、専門家を招聘して知的所有権についての研究会を開催しており、中でも阪本俊生先生の「知識資源としての個人情報『近代化と個人情報の価値:近代における個人情報の価値の増大とその生産』」は、欧米型近代社会におけるプライバシーと秘密を取り上げていて、知識資源を概念化する作業のために大いに参考になった。(2)については、知識資源に関する事例を収集するために、ダニエルスは中国において「雲南少数民族における技術知識の伝承に関する調査」、西井凉子はタイ王国において「南タイにおけるムスリムと仏教徒の宗教的知識の共有と乖離」、河合香吏は東アフリカ・ウガンダ共和国において、「北東部の牧畜社会における地理的・空間的知識や自然資源に関する一次資料の収集」、陶安あんどは中国において「中国民衆社会の法的知識と法意識」に関する予備調査をそれぞれ実施した。
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