研究概要 |
最近10年間の確率的画像処理への統計力学的アプローチにおける研究代表者の研究成果を,基本的理論から具体的アルゴリズムの構成法にいたるまでわかりやすくまとめ,Topical Reviewとして「Kazuyuki Tanaka, Journal of Physics A, vol.35,no37」という形で出版した.そこではベイズ推定を用いた確率的画像処理の一般論,厳密不等式を用いた解析的性能評価から始まり,平均場近似・ベーテ近似による確率的画像処理アルゴリズムの基本的理論の解説を行いつつ,更には実用的画像処理への応用も含めた形での解説を,画像処理の基礎知識を持たない物理分野の研究者にわかるように与え,同雑誌編集委員からvery interestingと言う形で高く評価された.またその一方で,人工知能における確率推論の分野で研究されている信念伝搬アルゴリズムとクラスター変分法の枠組みを整理・再定式化し,新しい確率的画像処理アルゴリズムの構成理論の基盤整備を行った.特に一部のモデルについては一般論を確立することに成功している.その成果の一部は2002年12月にWhistler(Canada)で開催された国際会議「NIPS^*2002 Workshop on Propagation Algorithm on Graphs with Cycles : Theory and Applications」で既に公開している.更に,画像の空間的平坦さを反映したQ状態ポッツモデルと空間的滑らかさを反映したQ状態イジングモデルに対して一般化された信念伝搬アルゴリズムを適用し,周辺尤度最大化によるモデルパラメータの推定も含めた理論的解析を行った.これらの成果の一部はJournal of Physics Aへの投稿を準備中である.なお,本計画研究の研究遂行の過程で開発したアルゴリズムの基本プログラムをホームページURL:http://www.statp.is.tohoku.ac.jp/〜kazu/SMAPIP-KazuKazu/から公開し,研究成果の一般からの利用環境の整備を行っている.
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