研究概要 |
本研究の目的は情報符号化技術に関して,統計力学に基づく典型評価方法を導入し,定着させることである.今年度は研究実施期間の初年度に当たるため,主に以下の予備的な研究を行った. 1.統計力学的な評価法で中心的役割を果たすレプリカ法の数学的正当性を示す方法を検討した.具体的には過去にスピングラス模型で行われている考察を詳細に吟味し,誤り訂正符号の性能評価に対して,I)解析性とII)凸性の2つの側面から議論する研究計画を立てた.来年度以降,この計画に沿って研究を遂行する予定である. 2.誤り訂正符号と並ぶ代表的な符号化技術である歪ありデータ圧縮を非線形パーセプトロンで実現する方法を提案し,その符号長無限大での性能評価をレプリカ法および数値計算を併用して行った(Phys.Rev.E66,066126(1-8)(2002)).統計力学的観点からは,この系は誤り訂正符号の系よりも取り扱いが容易である.今後は,この系に対して情報理論で行われている信頼性関数の詳細な評価をレプリカ法を用いて行い,符号研究における統計力学的手法の有効性を確かめる計画である. 3.スペクトル拡散符号の検出問題に情報理論で知られている信念伝播法を適用し,その性能解析からレプリカ法と等価な結果が導出されることを示した.今後はこの信念伝播法とレプリカ法との関係がどの程度一般的であるか,更に検討する計画である.
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