研究概要 |
確率伝搬法とその関連技術は,統計物理学,情報理論,画像処理,人工知能など複数の分野で研究が行なわれている。地域別にみると日本,米国,英国,オランダなどでの研究が盛んである。しかし,複数の分野で研究が行われていることから,それぞれの分野で既に得られている結果,問題点などについての知識が共有できていない。 本年度は科学研究費特定領域研究の初年度であったため,まずこのような問題点を解決すべく,池田思朗,田中利幸(東京都立大),Max Welling(トロント大学)の3名が中心となって国際会議NIPS(Neural Information Processing Systems)の一部としてワークショップを企画した。このワークショップは確率伝搬法を論じるために企画したものであり,複数の分野を専門とする研究者を様々な国から招待した。ワークショップにおいては既に得られている知見を確認し,現在の問題点を論じ,さらに応用の可能性について活発に意見が交わされた。我々の研究の重要性も認識され,国際的な研究者の間でも情報幾何学を用いた確率伝搬法の解析への期待を感じることができた。ワークショップでは特に論文の提出などを考えなかったので,発表論文はないが,新たな協力研究の可能性を確認した。 我々は現在,情報幾何により確率伝搬法を解析し,その一般的な理論体系を構築する段階にある。得られた結果を用いる際には具体的な問題を解く必要があり,その問題独自の構造を用いた表現が必要となる。具体的な問題としては現在,誤り訂正符号の手法であるターボ符号および低密度パリティ検査符号についての解析を行なっている。得られた結果については理研BSIS技術報告において公開している。
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