研究概要 |
統計神経力学を用いてCDMAの多段マルチユーザー復調器の解析を行い,その結果を用いてオンサガー反蹴項を引き抜きながら復調する新たなアルゴリズムを提案した.このアルゴリズムは確率伝播法にもとづく方法とほぼ同等の性能を持ち,ハードウエア実装がより容易であるという利点を持つ.これまでCDMAのマルチユーザー復調の理論限界はレプリカ対称性(RS)近似を使って求められおり,その近似が成り立たない場合があることが知られていた.そこでRSが成り立たない領域を議論するために,1ステップレプリカ対称性破れ(1step RSB)近似でCDMAを議論した.そCDMAは線形Isingパーセプトロンと数学的に等価である.ごれまで知見で非線形Isngパーセプトロンでは1step RSB近似をさらに近似したKrauth-Mezard(KM)近似が成り立つことが知られている.計算の結果,CDMAではKM近似が成り立たないことが明らかになった.現在,1step RSBの枠組みで計算を行っている. ガウスモデルを用いた画像修復は厳密解が知られている.一方,確率伝播アルゴリズム(BP)は近似アルゴリズムである.そこでガウスモデルにBPを適用し,BPの近似精度を評価した.その結果数値的には,BPは厳密解にほぼ一致することがわかった. 以上の結果は,系の性質を解析的に求めることができる可解モデルに関して得られたものである.しかしほとんどの場合,確率的情報処理に用いられるモデルは可解モデルではない.そこで統計力学で可解ではないモデルに対して行われている計算物理学的なアプローチを確率的情報処理へ応用することを試みている.
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