研究概要 |
本年度は,各研究項目毎に以下のような研究成果を得た. (1)反応時間と反応効率の関係について…本研究では,計算時間短縮を目的として,カイネーション反応,及び,ライゲーション反応におけるカイネーション,ライゲーション反応時間と反応効率との関連を調べた.特に,ライゲーション反応が時間のかかる反応であることから,ライゲーション反応についての分析を中心に行った.具体的には,ライゲーション時間を10秒から20時間程度まで変化させ,ライゲーション反応が実際に起こっているかを経路生成の問題に帰着させて測定した.その結果,ほぼ数秒でライゲーション反応の90%以上が終了しており,その後はゆっくりと反応が進んでいることが確認できた.この成果により,DNA分子計算における計算(反応)時間を大幅に縮める可能性を確認できた. (2)PCR増幅における実験プロトコルの最適化…分子計算における実験操作の信頼性を向上させるような実験パラメータの調整方法の提案を行った.実験結果の再現性と増幅効率の尺度から構成される評価基準を信頼性と定義し,PCRによるDNAの増幅過程に対して適用した場合の有効性について議論した.具体的には,長さ80,及び,120の塩基配列を持つ二種類のDNAを増幅するプロセスにおいて,増幅効率,及び,再現性を向上させるために品質工学的手法の適用を試み,実際に増幅効率向上,及び,再現性の向上を実験によって確認した. (3)DNAの濃度定量性についての検討…DNAの濃度を計算結果として用いる計算モデルを最短経路問題に適用した.この際,ハイブリダイゼーション反応では,数多くの解候補を生成し,実際に生成される経路の濃度は,反応前の各DNAの濃度に影響を受ける.このハイブリダイゼーション反応過程におけるDNA濃度の変化をシミュレータを作成することによって分析を行った.また,シミュレータにおけるパラメータ調整のための実験系を設計して,実際に実験を行った.実験結果からパラメータの調整を行い,シミュレーションモデルの有効性を検討した.
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