研究概要 |
バルジループ構造をとるDNAの安定性に関するモデル化 複数種の一本鎖DNAが存在する場合,必ずしも相補的な配列のみが結合するわけではなく,バルジループなどといった構造をとる場合があることが知られている.こういった構造をなるべく避けて,相補的な配列のみが特異的に反応するような塩基配列を得るために,DNA分子の自由エネルギーに基づいた分子の安定性予測を利用する方法が提案されている.従来の方法では自由エネルギーの予測にかかる時間が大きく,効率の良い探索ができなかった.本年度の研究で,このような塩基配列設計問題に対して,避けるべき構造を持つようなDNA分子の自由エネルギー計算を近似的に行い,有望なもののみについて自由エネルギーをより厳密に計算する.このフィルターとしての機能を組み込むことで,探索全体にかかる時間を大幅に改善する方法を提案しその有効性を計算機実験によって示した. ヘアピン型メモリを用いたアクエアスコンピューティングの実現 昨年度までにヘアピン型DNAメモリ(DNA-HRAM)を開発した.このメモリを利用したアクエアスコンピューティングによって,NP完全問題の一つである最大独立集合問題への適用を試みた.線形回数の操作で指数関数的に増加する状態数を作りだせる.計算後のbit状態を実験的に検出するため,オープナーによって目的のヘアピンを開いた後にフィラー(閉じているヘアピンの両側のリード部に相補な一本鎖DNA)を加えて閉じたヘアピンの相補配列を補い,ライゲーション反応でオープナー,フィラー側のDNA鎖を連結することで,閉じているヘアピン(bit状態:1)の数を相補鎖長へと変換する手法を考案した.この手法によって,得られた相補鎖のうち最短のもの調べることで最大独立集合問題の最適解を検出することが可能となる.実現のために,オープナーの形状を変更したり,反応温度を調整する工夫を行ったのち,実際に実験によって最適解が抽出できることを確認した.
|