研究分担者 |
榊原 康文 慶應義塾大学, 理工学部, 助教授 (10287427)
楠元 範明 早稲田大学, 教育学部, 助教授 (60277861)
上田 和紀 早稲田大学, 理工学部, 教授 (10257206)
鈴木 泰博 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (50292983)
小林 聡 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (50251707)
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研究概要 |
研究実績の概要は以下の2つに分類される. (1)自律的計算系の解析と設計: 自律的計算系において長さのみによる分子配列の設計法を探究し,有限オートマトンやDHPPなどがそのような簡単な設計によっても解決されることを示した.またDNAを用いた計算モデルである挿入・削除システムにおいてこのシステムが理論的に万能性を保持しながらどこまで簡約化できるかを探究し,認識部位および挿入・削除記号列の長さが共に1まで簡約化が可能であることを示した. 認識部位から数塩基離れた位置でDNA二重鎖を切断する特殊な制限酵素と環状DNA鎖を用いた新しいDNAコンピュータの方式について考案し,そのモデルの数学的解析を行った.その結果,計算モデルが万能計算能力を有することを明らかにし,また文脈自由文法などを用いた構文解析問題も効率よく解くことを示した.さらに,転写,翻訳,代謝などの細胞内分子反応メカニズムを用いた新たな分子計算方式の可能性を検討した. 構造分子の設計・解析のための理論を構築することを目標として,配列設計の問題に着手した.ハミング距離等をベースとた配列設計の理論では,配列の高速な評価が行えるため,比較的大きな配列空間を対象として,実験要求に適合する配列セットを探索することが可能である.しかしながら,構造分子の設計ハミング距離等では,バルジループや内部ループ等の二次構造形成に対処することが難しい.そこで本研究では,ハミング距離等をベースにした設計手法で得られた配列セットから,次構造をできるだけ形成しない配列セットを抽出するための手法を考案した. 京大と共同研究を行い,細胞内計算モデルとしての抽象化学反応系(ARMS)を用いて化学情報物質による種間の情報伝達が介在する植物・食植者・天敵の3者生態系のモデル化を行い,実験と合致する理論的結果を得た. (2)並列計算系による分子計算シミュレータの設計と試作: 分子計算系における局所的並列性をシリコン上で実装するために,ノードの多重集合,膜とその階層化,リンク,グラフ変換の四概念に基づく新たな計算モデルLMNtalの設計に着手し,基本設計をほぼ完了した.また,Javaを用いて試作処理系のコンパイラとランタイムを実装した.LMNtalは多重集合や会合概念をもった数多くの計算モデルの統合,リソースコンシャスな計算の基本モデルなどを目指したモデルであり,今年度は上記に加えて他の計算モデルとの比較検討も進めた.
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