研究概要 |
(1)膜計算モデルにおける新しい計算モデルの提案:神経細胞系をモデルとして,膜計算の新しいモデル「Spiking Neural P-Systems」を提案し,受理器と生成器の両タイプにおいてその計算能力の万能性を示した。 (2)平衡状態の効率の良い計算手法の開発:入力分子のサイズに比して会合の結果生成される分子複合体の個数が組合せ論的な爆発をするような反応系に対して,平衡状態を計算するための一般論を構築した。平衡状態計算を系全体の自由エネルギーの最小化問題として定式化し,変数の個数を著しく削減する新しいアルゴリズムを開発した。 (3)細胞並列計算に向けたバクテリアセルオートマトンの実装:細胞を用いたセルオートマトンの実現に向けての第一歩として,細胞内分子反応メカニズムを用いて自律的でプログラム可能なバクテリアコンピュータを開発した。これは世界で初めてバクテリアを用いて計算が実行できたことを証明するものである。 (4)抽象化学反応計算モデルの研究:微分方程式系などでは解析が困難な少数分子の化学反応系の振る舞いについて計算機実験と数理的解析により検討し,特にBelousov-Zhabotinsk (BZ)反応の数理モデルであるBrruselatorとOregonatorについて,分子数が少数になることによる不安定性について解析した。 (5)分子計算シミュレータ:階層構造と接続構造の両方を扱う階層グラフ書換えモデルLMNtalの表現力検証のために,代表的計算モデルのエンコード法の確立と実装を行った。Ambient計算のエンコードにおいては自己調整に基づく分散名前管理方式を実現した。純粋λ計算のエンコードにおいては,膜を活用することで従来手法よりもはるかに簡潔な方法を実現した。
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