プロテインホスファターゼPP2CβXと複数のMAP3Kとに結合するANKRA2の解析を進め、これらのタンパク質がPP2CβX-ANKRA2-MAP3Kという3者複合体を形成することを明らかにした。これはANKRA3がscaffoldタンパク質として機能していることを支持する結果である。さらに、ストレス応答性MAPキナーゼ経路の複数のプロテインキナーゼを結合するscaffoldタンパク質として知られるJIP-1がANKRA2と結合することを見出した。このことは、経路の活性化に正・負の作用を持つ複数のscaffoldタンパク質が互いに相互作用することによって、より複雑な制御を可能にしていることを示唆している。 また、PP2Cによる脱リン酸化に抵抗性を示す変異型の酵母ストレス応答性MAPキナーゼHog1pを、遺伝学的手法により検索し、その変異箇所を同定した。相同な変異を哺乳類p38に導入したところ、in vivoでスレオニン残基のリン酸化が昂進していた。この変異箇所が、PP2Cによるp38の認識に関わる領域であるという可能性が考えられる。 架橋剤を用いた共沈実験により、浸透圧刺激後、Pbs2pが一過的にsho1pと結合することを明らかにした。また、これに先立ってsho1pと結合するタンパク質が存在することを見出した。浸透圧刺激に応答して、sho1pとこれらの標的タンパク質との相互作用を制御する機構の存在が明らかになった。 糸状菌においてもSln1p経路に相同な機構が浸透圧刺激によるストレス応答性MAPキナーゼ経路を活性化していること、Sho1p経路はこれには関与していないことを、共同研究により明らかにした。
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