昨年度単離した、PP2Cによる脱リン酸化に抵抗性を示すと考えられる変異型p38のin vivoでのリン酸化状態を検討したところ、ストレス刺激非存在下でもスレオニン残基のリン酸化が昂進していた。また、ストレス刺激によりリン酸化状態が昂進した後の脱リン酸化過程を時間経過を追って観察したところ、スレオニン残基の脱リン酸化が野生型に比べて顕著に遅れたのに対し、チロシン残基の脱リン酸化には概ね正常であることが明らかになった。また、この変異型p38を培養細胞で高発現すると、p38の標的転写因子の一つATF2の転写活性化能が昂進すること、また細胞死が誘導されることを見出した。これらの結果は、この変異型p38が細胞内で活性化型として挙動することを示すものである。 架橋剤を用いた共沈実験により、浸透圧刺激後、Pbs2pがSho1pとの結合に先立って一過的にLas17pと呼ばれるアクチン制御タンパク質と結合することを明らかにした。また、この結合がSho1pのSH3ドメインとLas17pのPro-rich配列を介するものであることを示した。しかしながら、Pro-rich配列に変異を導入しこの結合を阻害しても、HOG経路の活性化には顕著な影響を与えなかった。この結合が、擬菌糸形成など浸透圧応答以外のSho1pの機能に関与していることが考えられる。 浸透圧応答と並んで酵母の耐塩性に関与するRim101p経路の情報伝達機構に、液胞で分解されるべき膜タンパク質のソーティングに関わるMVB/ESCRT経路が密接に関与することを見出し、ESCRT複合体と呼ばれる構造が形成されることが、経路の活性化に必須であることを示した。
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