JNK MAPキナーゼ経路の足場タンパク質JSAP1のin vivoにおける機能を明らかにするため、ノックアウトマウスの作製を試みた。その結果、キメラ率の高いマウスは生後すぐに死亡することから、JSAP1はマウスの生存に必須機能を持つと推察された。そこで、Cre-loxPシステムを用いた条件付きノックアウトマウスの作製に着手した。先ずJsap1遺伝子のイントロン2および4にloxP部位をそれぞれ1つ持つES細胞を6系統樹立した。そのうち2系統のES細胞を用い、キメラ率が90%以上のキメラマウスを計6匹得ることができた。現在、子孫マウスのスクリーニングを行っている。 JNK(あるいはJNK経路)が関わるJSAP1の生理的機能解明を目指して、先ずJSAP1におけるJNK結合部位を詳細に検討した。その結果を基に、JNKと結合できない変異JSAP1ノックインマウスの作製に着手した。現在、1系統の変異ES細胞の単離に成功している。 JSAP1およびJSAP2が関わると考えられる様々な現象を分子レベルで明らかにするため、酵母2ハイブリッド法を用いてJSAP1(あるいはJSAP2)と相互作用するタンパク質の探索を試みた。脳、心臓、精巣のライブラリーをスクリーニングした結果、機能未知のタンパク質を含む20種類以上のタンパク質の同定に成功した。今後、いくつかのタンパク質に焦点をあて、JSAP結合性の生物学的意義を明らかにする予定である。 JSAP1はキネシンを介して神経細胞の突起先端に輸送されることがすでに報告されている。また、キネシンはリン酸化によりモーター活性が制御されることから、その制御にはJNKの関与が示唆されている。そこでJNKと結合できない変異JSAP1を用いて解析したところ、予想に反し、JSAP1はJNK非依存的に輸送されることが明らかになった。
|