研究概要 |
広範な生物に対して毒物である重金属の銅をストレス源として用いた場合の、線虫の個体レベルでのストレス応答とMAPKカスケードとの関係について調べた。その結果、銅ストレスによりMLK-1(MAPKKK)、MEK-1(MAPKK)およびKGB-1(JNK型MAPK)からなるキナーゼカスケードが活性化すること、そしてそれが個体レベルにおける銅ストレス耐性に必須であることが明らかとなった。 また、新規MAPKホスファターゼとして線虫VHP-1を同定した。VHP-1は、in vitroにおいてKGB-1のキナーゼ活性を抑圧できる。一方、in vivoにおいてvhp-1が欠損すると線虫は致死性を示すが、その致死性はmlk-1、mek-1あるいはkgb-1の変異により抑圧された。このことから、vhp-1は、MLK-1、MEK-1およびKGB-1からなるキナーゼカスケードを負に制御する因子であることが示唆された。 さらに遺伝学的解析から、SEK-1(MAPKK)およびPMK-1(p38型MAPK)からなるキナーゼカスケードも銅ストレス耐性に関与しており、そのカスケードもVHP-1によって負に制御することが判明した。これらのことから、銅ストレス耐性にはMLK-1,MEK-1およびKGB-1からなるキナーゼカスケードとSEK-1とPMK-1からなるキナーゼカスケードが関与し、またそれらはVHP-1ホスファターゼによって負に制御されていることが示唆された。
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