(1)本年度、日本人研究者としては初めてビクトリア湖のシクリッド調査を行った。平成16年8月から平成17年2月にかけて、タンザニアの現地(ムワンザ湾)において採集・調査を行い5000個体にものぼる多数の遺伝子解析用・形態計測用サンプルを回収した。これらのサンプルは、今後、シクリッドの集団解析等に活用する予定である。(2)シクリッドの視物質の環境適応における役割を調べるため近縁な2種で異なる透明度の集団を用い、LWS遺伝子の配列の進化との関連を明らかにすることを試みた。その結果、透明度の低い集団のアリルで長波長シフトが見られLWS遺伝子がシクリッドの光環境への適応の過程で種もしくは集団の形成に関わってきたことが示された。(3)シクリッドの多様化の一因である体表模様の形成遺伝子の単離を目的とし、ゼブラフィッシュにおける体表模様形成遺伝子の単離を試みた。ポジショナルクローニングによりobelix/jaguar、leopardの原因遺伝子を単離することに成功した。現在シクリッドの置けるホモログの解析を進めている。(4)シクリッド稚魚の顎部を含む頭部上皮特異的に発現する遺伝子cimplの解析を行った。免疫染色の結果は上皮および基底膜への分布を示唆し、細胞外マトリクスの再構築に関与している可能性が予想された。これにより本遺伝子がシクリッド成長期における形態の多様化時期に関与することが示唆された。
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