研究課題
倍数体化の種形成における役割を解明するために、昨年度に引き続ぎ2倍体と4倍体におけるマイクロアレイ実験を行った。4倍体は2倍体にくらべ体積が約2倍巨大化している。4つの4倍体ラインを2倍体と比較したところ、ANOVA、tの両検定により2倍体と4倍体の芽生えにおいて、相対的に発現量の増えている遺伝子は無いことがわかった。このことから、倍数体化による巨大化は特定の遺伝子ではなくゲノム量の増加にともない転写翻訳能力が増大することによって引き起こされていることがわかった。生殖的隔離に関わる花粉管ガイダンス因子探索のために花粉管特異的に発現する受容体カイネースの遺伝子破壊株を解析した。約60遺伝子について解析を進めたが得られた一重破壊体では野生型との顕著な差が見られなかった。そこで2,3,4重遺伝子破壊体作出を進行中である。花粉特異的に発現するMIKC^*型MADS-box遺伝子3つについて3重遺伝子破壊体を作出したところ、湿潤環境下では顕著に発芽能力が落ちることがわかった。マイクロアレイ解析の結果、3重遺伝子破壊体では野生型に比べ水チャンネル遺伝子の発現が増加しており、現在この遺伝子発現変化と花粉生存との関連について解析をすすめている。さらに、遺伝子破壊体と野生型の花粉細胞形態を透過型電子顕微鏡を用いて比較し、どのような原因で発芽能力が低下するのかを解析中である。雨天、朝露などが定期的にある野外において花粉の湿潤耐性は種の交配能力に大きな影響を与えることが予想され、種形成に重要な遺伝子であると考えられる。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA 102
ページ: 2436-2441