研究課題/領域番号 |
14101004
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研究機関 | (財)中近東文化センター |
研究代表者 |
大村 幸弘 (財)中近東文化センター, 学術局, 主任研究員 (10260142)
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研究分担者 |
吉田 大輔 (財)中近東文化センター, 学術局, 研究員 (20280670)
中井 泉 東京理科大学, 理学部, 教授 (90155648)
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キーワード | カマン・カレホユック / 文化編年 / ヒッタイト古王国時代 / アッシリア植民地時代 / ピット層 / 前期青銅器時代 / 印欧語族 / 民族移動 |
研究概要 |
第21次カマン・カレホユック発掘調査は、2000年6月26日〜9月22日まで行なった。本プロジェクトの主目的の一つは、カマン・カレホユック遺跡の『文化編年の再構築』である。 第21次は、北区で第IIIb層-ヒッタイト吉王国時代、第IIIc層-アッシリア植民地時代の2文化層に焦点を合わせ調査を進めた。第IIIb層に関する発掘は、VIII〜X区で行なった。X区では、2005年に確認している城塞の精査を行ない、この城塞とVIII〜IX区で出土している第IIIb層の建築遺構と層序的に結びつくか否かを明らかにすることを目的とした。しかし、今回の調査では、城塞とVIII〜IX区出土の建築遺構の関わりを明確にすることはできなかった。第IIIc層の調査は、V〜VII区で行なった。以前の調査で、これらの発掘区からは南北に走る第IIIc層の建築遺構を確認している。第21次調査では、それらの建築遺構の取り外しを行なうと同時に、VIII区の第IIIb層の建築遺構との関わりを解明することを目的として発掘を行なった。南北に走る第IIIc層の建築遺構を取り外した結果、ピット層を確認することができた。出土遺物、特に土器形態、胎土、製作技法等を観察した結果、このピット層は、第IVa層、つまり前期青銅器時代と中期青銅器時代の中間期に年代付けられる可能性の高いことが明らかとなった。この時期の土器製作技法は、轆轤製のものと前期青銅器時代の特徴を示す手づくね製の2グループに分かれる。前者の形態には、アッシリア植民地時代の特徴を強く示すものが数多く含まれており、既にこの時期、中央アナトリアはメソポタミアの文化圏に組み入れられたことを示唆している。また、この層序内からは、第IIIa層のヒッタイト帝国時代まで引き継がれる土器形態も確認されている。このことは、印欧語族のアナトリアへの侵攻時期を考察する上で極めて重要な意味を持つものであり、中央アナトリアのみならず前3千年紀末から前2千年紀初頭の古代中近東世界の民族移動を考察する上でも、一つの手がかりとなる資料と考えることができる。
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