研究概要 |
夏季にロシア連邦ヤクーツク近郊のカラマツ林,伐採跡地,火災跡地において,地表面熱・水・CO_2収支の長期連続観測をおこなった。また新たにアラスにおいて,地表面熱・水収支の観測をおこなった。カラマツ林はLarix gmeliniiの成熟林で,平均樹高は10m,樹冠面の高さは14m,密度は1600ha^<-1>であった。最終年度の観測結果から過去5カ年の変動傾向についての検討を行った。カラマツ林では2003年7月の調査によって,カラマツのLAIが1.9,林床植生のLAIが1.0と推定されている。LAIの季節および経年変化は測定されていないが,林床と樹冠上の日射の比である日射透過率は,相対的な樹木のLAI変化の指標となる。太陽高度が最も高い6月後半における樹冠上の全天日射が600W m^<-2>以上の条件の平均日射透過率を,カラマツのLAIの相対的変化の指標として用いた。2002年〜2006年のこの条件による日射透過率は,0.284〜0.380の範囲であった。気象要素と比較したところ,夏季の降水量と1年遅れの日射透過率の変化パターンがよく一致する(r=-0.77)ことがわかった。伐採跡地では伐採2年後の2002年以降,草本植生の侵入と伐採されたシラカンバの萌芽更新が徐々にすすみ,地表植生の回復が見られた。伐採5年後の2005年頃から,新たに発芽したシラカンバの群集が目立つようになった。火災跡地では草本植生と萌芽更新したシラカンバが,新しい火災跡地では先駆植物のヤナギランが優占した。こうした植生変化を反映して純生産量(NEE)は以下のように経緯した。 カラマツ林のNEE年々変化の要因として,降水量が最も重要であり,2003年〜2006年にかけての増加傾向は,降水量の増減傾向と一致した。2003年と2005年は降水量が多かったわりにNEEは中程度であったが,この両年は前年の少雨の影響でLAIが小さかったためと考えられる。2006年は降水量,成長期間,LAIのすべての条件が適していたため,NEEは最大となった。伐採跡地では,伐採5年目に最大の正のNEEを示し,その後は経年的にNEEは減少傾向で,地表植生の回復によってCO_2放出が減少したことを示す。しかし2004年に最低のNEEを示した後は,下げ止まっている。
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