研究概要 |
平成15年度においては,完全非接触による2自由度(XY)超精密・高速位置決めテーブルシステムのプロトタイプを構築するとともに,超高速・高精度スピンドルの開発を目的とした要素研究を実施し,以下のような研究成果を得た. 1.ナノメートルオーダの位置決め精度を有する多自由度テーブルシステムを実現するため,駆動要素として推力が電流に比例し非接触駆動が可能なボイスコイルモータ,案内要素として非接触かつ高剛性である真空吸引バランス方式多孔質形空気静圧軸受,変位センサとして非接触かつ高分解能であるレーザ測長器を採用するとともに,ボイスコイルモータおよび多孔質形空気静圧軸受をテーブル重心周りに対称に配置し,完全非接触化,構造対称化,並びに低重心化を同時に実現した高剛性テーブルシステムを構築した. 2.構築したテーブルシステムにおける案内機構の特性について,詳細な検討を行った結果,軸受剛性83.7N/μm,テーブル真直度31.6nmを達成するとともに,軸受部への給気や真空吸引に伴うテーブルの振動は無視できる程度であることを確認した. 3.実際に構築したテーブルシステムを用いたステップ応答実験より,各駆動方向におけるテーブルの応答が,シミュレーション結果とよく一致し,駆動軸間干渉が存在しないことを明らかにした. 4.テーブルの微小位置決め特性について評価を行った結果,構築したテーブルシステムがX, Y, θの各駆動方向においてレーザ測長器の分解能の2倍程度である2nm, 2nm, 2μradの位置決め分解能を有することを明らかにした. 5.テーブルの長ストロークPTP駆動を行った結果,最大加速度50mm/s^2,最大速度2mm/sの駆動条件においてX軸方向およびY軸方向のいずれにおいても最大追従誤差3nm以内の超精密位置決めを実現した. 6.超高速空気静圧スピンドルの熱変形抑制法として,給気温度制御法を提案するとともに,実際に給気温度制御システムを組み込んだ空気静圧スピンドルを構築し,給気温度制御による熱変形抑制の効果およびその有用性を明らかにした.
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