研究課題/領域番号 |
14102021
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
電子・電気材料工学
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
藤村 紀文 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (50199361)
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研究分担者 |
松井 利之 大阪府立大学, 工学研究科, 助教授 (20219372)
芦田 淳 大阪府立大学, 工学研究科, 講師 (60231908)
吉村 武 大阪府立大学, 工学研究科, 助手 (30405344)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2006
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キーワード | 強磁性強誘電体 / YMnO_3 / 強誘電体ゲートトランジスタ / 誘電性-磁性交差相関現象 / 減分極電界 / 電界効果型スピン素子 / Si:Ce希薄磁性半導体 / スピントロニクス |
研究概要 |
本研究では、マルチフェロイックFETの創成に向けた研究を遂行した。Si系磁性半導体と磁性強誘電体の新規な物性を明らかにするとともに、それらの接合によって生じる機能を利用した3種類の電界効果デバイスを提案することができた。最終デバイスの作製までは終了したものの研究期間内にデバイス動作を確認することはできなかった。しかしながら、それらの基礎物性は、5年間で41報の原著論文を発表し、学術的価値、関連分野への波及性に関して大きな成果が得られた。YMnO_3の磁気特性と強誘電特性との相関(マルチフェロイック物性)に関しては、ネール点近傍の温度において、YMnO_3の分極反転の抗電界および低電界側での誘電率に異常があることが見いだされた。反強磁性強誘電体であるYMnO_3はGinzburg-Landou方程式を元に導かれたドメイン安定性の議論から、強誘電性ドメイン壁は常に反強磁性ドメイン壁を伴うことが示唆されている。今回、実験的に反強磁性ドメインの形成によって強誘電性のドメイン反転が抑制されることを明らかにした。この結果はPhil.Mag.Lett.に招待論文として掲載された。誘電率がネール点で大きく減少する、強誘電性の抗電界がネール点以下で大きく増加する等が分かった。ラマン分光の結果から、フォノン-スピンカップリングが生じていることも明らかになっており、この二つの現象がリンクしていることが明らかになった。このネール点で抗電界が増加することを用いることによって、低電界で書込み、保持時は大きな抗電界を有するデバイスの設計が可能になったと考えられる。さらに、YMnO_3の反強磁性を利用した「エクスチェンジバイアス効果」も素子応用としては面白い効果である。また、AサイトをYbと置換することによって数少ない強磁性強誘電体を創出した。強磁性強誘電体を用いると「磁性強誘電体のスピンフィルタリング効果」を利用したデバイスの創成が可能になる。さらに、「磁性・強誘電性ドメイン相互作用」と「磁性極性半導体」との多重分極相互作用の3つの効果を用いた3種類のマルチフエロイックFETが構築できることが示唆され、設計指針が構築された。これらマルチフェロイック材料をゲートに、磁性半導体をチャネルに用いたこれら3つのデバイスは、世界初の提案である。しかしながら最も重要なことは、最初に記載した強誘電体をゲートに用いるとホール誘起の金属的磁性半導体をチャネルに用いることができることである。CMOSプロセスがイオン注入装置の停止で困難になったためにTFTの作製に計画を変更し、19年4月に完成した。デバイス動作は、ここ1-2年で確認されるものと期待される。この新規な電界効果デバイスをより効果的に動作させるために、極性半導体をチャネルとして用いることが有効であると言うことも提案した。
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