研究概要 |
平成17年度は、酸化物材料の熱電性能アップに対するナノ構造化の有効性を検討し、その実用的製造プロセスの開発を目指した。具体的には、ホモロガス相生成を利用する方法とナノ粒子の固体反応を利用する方法の開発をいった。その結果、酸化物熱電材料の性能向上を可能にした。 1.ホモロガス相生成を利用した自己組織化超格子構造形成と熱電変換性能 SrO-SrTiO_3(STO)系にはRuddlesden-Popper相と呼ばれる層状ペロブスカイト構造を持つホモロガス相が生成することが知られ、熱電変換材料の観点からは、層間でのフォノン散乱が助長されることによって熱伝導率の低下が期待される。そこで、La,Nb等をヘビードープした単相を合成することを試み、これに成功した。熱伝導率は、予想通り端成分であるSrOおよびSTOの値よりも低下し、ホモロガス相生成が有効であることを見出した。現在のところ、10%LaドープしたSTO-327相が1000KでZT=0.18を達成している。今後さらに緻密化、配向化により性能向上が期待できる。 2.ナノシート結晶の固相反応を利用した自己組織的超格子形成 数nm厚みのNa_xCoO_2(NC0)とCO_3O_4の板状粒子が交互に積層したナノ超格子構造を、自己組織的に構築することに昨年度成功した。しかし、Co_3O4の熱電特性が低いために、超格子特有の性能向上は見られなかった。そこで本年度は、反応焼結過程におけるCa源の供給方法を種々検討し、すでに配向制御の研究から得られているCa_3Co_4O_9(CCO)の生成メカニズムを踏まえて、Co_3O_4をCCOに変えた超格子形成プロセスの確立を試みた。その結果、NCO/CCOの完全な積層構造を得るまでには至らなかったが、NaとCaの傾斜組成からなるナノコンポジット構造の構築が可能になった。これにより、NCOの耐水性、耐熱性を大幅に改善すると同時に、純NCOと同等の熱電性能を持つ材料を合成することに成功した。
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