研究概要 |
1.超好熱菌遺伝子破壊系の改良 ΔpyrF株を宿主とし、pyrFマーカー遺伝子の上流および下流に相同領域を導入することにより、一段階目の相同組換えの後にpyrFマーカー遺伝子がゲノム上から脱落する系を開発した。この系では原理的には如何なる数の遺伝子でも破壊・導入が可能となる。 2.中央代謝経路の解明 炭素中央代謝に着目し、ゲノム情報からその存在が不明であった多数の遺伝子を特定した。 (1)我々は超好熱菌ゲノム上でそれまで特定されていなかった糖新生経路の鍵酵素はfructose 1,6-bisphosphatase(FBPase)遺伝子を同定し、遺伝学的にその機能も証明した。 (2)本菌の解糖系の最終反応が一般的なpyruvate kinaseではなく、phosphoenol-pyruvate synthaseにより触媒されていることを遺伝学的に証明した。 (3)今まで知られていた経路と異なる構造的に新規な3種の酵素から構成される新しいキチン分解経路を発見した。 (4)T.kodakaraensisではribulose monophosphaIe pathwayの逆反応がpentose合成を担っていることを発見し、従来のpentose phosphate pathwayに代わる始原菌特異的なpentose合成経路を明らかにした。 以上の研究成果によりT.kodakaraensis K0D1の中央炭素代謝のほぼ全容が明らかとなった。 3.Reverse gyrase paradoxの解決 Reverse gyraseは唯一の超好熱菌固有の酵素である。Reverse gyraseの特徴的な構造と本酵素が超好熱菌の生育に必須であると考「えられてきたことから、生命が超好熱菌として誕生したという説は否定されていた。我々はreverse gyrase遺伝子の破壊株を取得することに成功し、破壊株が90℃で生育することを見いだした。したがって、reverse gyraseが存在しない条件であっても生命が高温環境(90℃)で誕生し得たことを実験的に証明した。 4.Type III Rubiscoの機能解明 Type III RubiscoはCalvin回路を持たないArchacaにのみ存在し、Rubiscoのcarboxylase活性を示すものの、その生理的役割は不明であった。我々は比較ゲノム的アプローチよりT.kodakaraensis内でAMPからType III Rubiscoの基質ribulose1,5-bisphosphateを供給できる2種の新規酵素AMP phosphorylaseおよびribose 1,5-bisphosphate isomeraseを同定した。この代謝経路は糖新生系の一部とpentose phosphate pathwayの一部と合わせて新しい第5の炭酸固定経路を形成し得ることも判明した。
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