研究概要 |
コンビナトリアルケミストリーは、組み合わせの概念を用いることで、迅速に化合物ライブラリーを構築するための化学である。我々は、天然有機化合物の構造を基盤とする化合物ライブラリーを構築することができれば、その化合物群は、薬剤開発のリード化合物だけではなく、生体機能解明のためのケミカルプローブの開発に有用であると考えた。しかしながら、これらの天然物は、さまざまな官能基を有するため、現在の技術では、そのライブラリー構築は容易ではない。本研究では、複雑な官能基を有する天然物(オリゴ糖、脂環式化合物、複合糖質)をターゲットとして固相および液相法を用いるライブラリー構築について検討する。本年度は、エルゲノシン298-Aの固相ライブラリー構築を検討した。エルゲノシン298-Aは,ヒドロキシオクタヒドロインドールを含むテトラペプチドであり,セリンプロテアーゼの阻害活性を有する。共通部位のヒドロキシオクタヒドロインドールの水酸基を足がかりに固相上のシリルリンカーに担持し,両末端を伸長した。3種の合成ブロックについてはすべて最後に酸でまとめて脱保護できる保護基を導入し,N末端についてはFmoc法で,C末端はアリル基をPd触媒を用いて選択的に脱保護する方法をとった。本固相合成では、ブロックの結合順序が重要であり、不適切な順番で結合した場合には、ジケトピペラジンの副生成が見られた。3種の合成ブロックの適切な順に固相上でカップリングを行い,2x3x4の計24種類のエルゲノシン類縁体のコンビナトリアル合成を達成した。
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